プロフィール
橋本 健治 (1974年生まれ 広島市五日市在住)
山口大学大学院 理工学研究科 博士前期課程終了
広島福祉専門学校 社会福祉士科卒業 社会福祉士
2001年4月~2004年9月
ホームスクーリングセンター メイプル
2005年4月~現在
スクールライフサポートセンター だかあぽ
家庭教師として独立するきっかけ
専門学校卒業後、子どもたちと一緒にハイキングに行ったり、いろいろなスポーツやクッキングに挑戦する活動にも参加し始めました。
教育的な意味合いよりも周りに認められる体験を通して自尊心を高めていってほしいという意味合いが強く,活動を通して子どもたちがいい顔をしていく様子を見ていくことができました。
ところが,それと並行して“子どもが暴力から自分を守る”ためのワークショップを小学校で行ってきたのですが,廊下を歩いている時,遊びに出かける活動に参加している子を発見しました。
おでかけの活動では楽しそうにはしゃいでいるのに,その時は眉間にしわを寄せて,うつむいて過ごしていました。
もしかしたら,たまたま何か考え事をしていたのかもしれませんが,いつも見ていた様子からは想像できない姿で,すごくショックを受けたのを覚えています。
そのころからレクリエーション的な楽しい時間を過ごしてもらう活動よりも,学校生活に必要なスキルや基礎学力の補充に関心が向くようになってきました。
子どもたちにとって,生活技能の練習や余暇の時間を楽しむといったこともとても大切です。それに加えて,学習の面から学校生活を楽しくし,自信をつけていってもらえるサポートがあればいいなと思い,個人で家庭教師を始めることにしました。
軽度発達障害の子の家庭教師という仕事
家庭教師という仕事は昔からありますが,ここ20年で大きく変化しました。
学校の勉強の教え方というのは,今も昔もあまり変わらないというイメージがあるかもしれません。しかし,21世紀に入ってからのデジタル機器やインターネット環境の向上により,教え方の入手・選択肢が一気に広がりました。
発達障害のお子さんへの理解も広まり,いろいろなサポート法が登場してきました。教育の分野だけでなく,福祉の分野でも支援の幅が広がっています。
教える内容がほとんど変わらないからといって長年の指導経験だけで済むことはなく,家庭教師は常に新しい手法を勉強していかなければなりません。
この20年間の家庭教師の仕事の変化から,この仕事のことを知ってもらえたらなと思います。
● 英語の授業の難化
学校の授業のカリキュラムもこの20年で大きく変化しています。
プログラミング教育が始まったり,データの処理(統計学の基礎)やデジタル機器,インターネット周りの単元が増えていますが,一番大きな変化は英語かなと思います。
2002年から小学校でも3年生から英語を勉強するようになりました。といっても,「英語」の時間があるのではなく,「総合的な学習」の一環として英会話に触れたりゲームをしたりする感じです。
されに2011年からは,小学3,4年生はそのままですが,小学5,6年生で「外国語活動」として必修化されます。そして,2020年から3,4年生も必修化され,5,6年生は「外国語」として教科化。他の科目と同じような本格的な教科書を使用するようになりました。
この2020年の改定は中学の英語にも大きく影響を与え,中学1年前期の英語の難易度が格段に上がっています。
小学校では I like ~. の ~ に自分の好きなもの(こと)を当てはめて発表するといった感じで,英文法を習いません。アルファベットを書く練習をしたり,例文と辞書を見ながら英文を書いたりしますが,英単語の暗記も要求しません。
英語の勉強が好きでない子は小学校の英語の基本文を忘れて中学に進学するのですが,中学の教科書は,小学校で使った基本文は知ってる前提の作りになっています。
そのため,昔のカリキュラムよりも授業についていけない子が続出しています。
家庭教師では,時間が取れそうなら小学校6年の後半辺りから英語の読みの基本(フォニックス)の練習をしています。英語の勉強は,中学に入る前にやっておかないと苦労する状況になっているので注意が必要です。
● インターネット環境の変化
昔はテレビやビデオ教材のような動画を使った授業くらいしかなかったのですが,今では You tube のような動画投稿サイトを使って教えてくれる人たちが表れてきて,インターネットと受信端末があれば無料で解説授業を受けれるようになってきました。
例えば,家庭教師のトライはYou tube で中学・高校の授業を,NPO法人eboardは小学校からの授業を無料で提供しています。
市販の問題集も,高価なDVD付属のものは減っていっており,問題集に印刷されているQRコードから解説動画が見れるものが登場しています。
動画教材のいいところは,複雑な文章の解説を読まなくていいことと,くり返し視聴できることです。そのため,1人で参考書や答えの解説などを読んで勉強できなかった子が,1人で勉強できる可能性が増えています。
だかあぽでは,テスト前で時間が全然足りないときなどに,簡易な解説動画を作成して生徒に渡すこともあります。いつも解説動画を作れるわけではないのですが,動画作成を利用することで指導の幅が確実に広がっています。
● 見る力とアセスメント
学習障害に関連するアセスメントは大きく広がりました。
視知覚認知の検査は「日本版フロスティッグ視知覚発達検査(DTVP)」という検査があって療育機関などで検査されることもありましたが,対象が小学校低学年まででした。英語では対象年齢を引き上げた第3版まで出ていますが日本語版は出ていません。
読み速度に関してはDEMという眼球運動検査がありますが,英語版で入手が困難です。
しかし,2014年に学校の先生でも実施できる日本独自の「見る力の検査キットWAVES」が誕生し,ビジョントレーニングに向けたアセスメントがしやすくなりました。
また,読み書きに関しても,ひらがなや漢字などを考慮した日本独自の検査が求められていましたが,2006年に「小学生の読み書きスクリーニング検査 STRAW」(2017年に改訂 標準読み書きスクリーニング検査 STRAW-R),2013年に「小学生の読み書きの理解 URAWSS」(2017年に改訂 URAWSS-II)という検査キットが誕生しました。
2014年には,読み速度や単語の理解だけでなく,単語の意味と文法を統合して文章を理解するところまで含めた「包括的領域別読み能力検査 CARD」が開発され,教師によるサポートの幅が広がっています。
● ビジョントレーニング
感覚統合療法は,発達障害の子の支援の方法の1つとして広島でも取り入れる支援者がいましたが,感覚統合療法の中で眼球運動のトレーニングを積極的に行っている人はそんなにいませんでした。
私は,たまたま本屋でオプトメトリストの内藤貴雄先生の「勉強嫌い,集中力のなさは眼が原因だった」という本に出会い,ビジョントレーニングを知りました。
視知覚認知の教材は「こぐま会」の「ひとりでとっくんシリーズ」で結構補えるのですが,見るのが苦手な子の運動系の教材がつかめてなかったので衝撃を受けました。
発達障害の分野でも2010年前後からビジョントレーニングが広まり始め,「見る」ことについてのトレーニングを受けられる子どもたちが増えてきました。
だかあぽでも家庭教師の時間にトレーニングすることは可能です。ただ,その分勉強を教える時間が減ってしまうので,どっちを取るか迷うところですね…
トレーニングはご自宅でできるので,家庭教師のない日にコツコツやってもらうといいですね。
● 聞くトレーニング
昔は「集中して聞くこと」に関する書籍があまりなくて,私が家庭教師を始めた頃は「きくきくドリル(シグマベスト)」を参考にしていました。
もちろん学校や療育機関では,独自のやり方でサポートしていたのでしょうが,ご家庭でできるような市販品にはなりにくかったように思います。
上嶋惠先生の「教室でできる特別支援教育 1分間集中トレーニング」の一部で聞くトレーニングが取り上げられており,集中しにくい子にこんなトレーニングをしてるんだ。面白いな…と思った記憶があります。
ワーキングメモリという言葉が広まってくると同時に,音韻ループ(言語性ワーキングメモリ)という言葉も広まっていき,上嶋先生の「聞くトレーニング」だけでなく,LDに関する情報発信・サポートを行っているNPOフトゥーロの「聞きとりワークシート」といった「聞く力」の書籍が出てきています。
2010年代後半には,聴覚情報処理障害(APD)という概念が広まり始めました。現在は,聞き取り困難(LiD)という呼び方に変わりつつあります。
こちらの領域のトレーニングとして,語彙力を上げていくことが挙げられています。まだ比較的歴史が浅い概念なので,ケース別の細かい実践ノウハウは溜まってないようですが,これからの発展が期待されます。
その他の活動
前職の入社時に上司から渡された本の中に「自分の専門分野以外のことを1つ勉強しておきなさい。」というようなことが書かれていました。そうすることによって視野が広がるし、本業と組み合わせて新しいサポートができるようになるからだそうです。
そのため,毎年,できるだけ新しいことに挑戦するようにしていましたが。最近はできてないですね…
2006
感覚統合療法だけでなくSAQやコーディネーショントレーニングなどの運動面の勉強に力を入れる
2007
感覚おもちゃの通信販売開始 2020 一旦終了
2008
講演会の講師に挑戦する
・「感覚統合からみた子どもの行動と発達の理解」
・「見るのが苦手な子どものための視知覚トレーニング」
・100人規模の講習会「感覚統合療法講習会 基礎コース」を主催する
2010
教材ソフトを作れるようになりたくてプログラミングの勉強を始める
ビジョントレーニングソフト作成・販売 2016.3 販売終了
2011
LEGOを使ったSTEM教育を家庭訪問形式で始める
2012
おもちゃ輸入に挑戦する
2014
放送大学 教養学部 全科履修生として入学
年4単位程度のペースで,のんびり勉強していくことにする
2015
ロボットプログラミング教室を始める 2017.3 終了
2016 ~ 2017
教材作成会社でeラーニング教材の作成を手伝う 2017.12 終了
2018 ~
動画作成の方法を知ったので,自分の生徒用の解説動画作成法を模索する
webアプリ教材のための javascript と PHP の勉強を始める
2020
新型コロナウィルスによる訪問自粛に合わせて、オンライン授業に挑戦する
2021
算数プリント作成の効率化を目指し,Excel VBA で問題作成するようになる